ほんとちっせーのな、の爪。



大きなお世話だ。



「…ね、ひどいよね。くん」
「まあまあ」

私は雑誌を読む君の肩にもたれながら、
昨日君の友達に言われた言葉を思い出して腹を立てていた。

「だって、私が自分の爪の小ささ気にしてるの知っててだよ?」
「……どれよ」

君が私の手を取る。
…こいつもか!

「みるなっ」
「痛ぇ!」
「ふんだ」
「おま…はたく事ないだろ」
君だって十分知ってるくせに。なんでわざわざ見直すの」
「んー」

君が無視してまた私の手を取った。
なぜかその顔は、すごく嬉しそう。

「なにがそんなに楽しいの…」
「いや?何も何も…なあ」
「ん?」
「爪が小さくて何か悪いの?」
「だって…やだよ、マニキュアすっごく塗りづらいもん」
「ああ、乙女の事情ね」
「そう」

そんな会話の間も、君はずっと笑っていた。
私は、君が両手で包んでいる私の手のひらを見る。
それからそれをじっと見つめる君の目を見た。
たまに手で撫でたり指の形を一本一本確かめるようになぞって、
その度に大きな目が愛しげに細められるのを、見た。

「やあ…しっかし」
「?」



「ほんっとにちっちぇえなあ、」



お前の爪も手も。



そう言った君がとても幸せそうだったから、私は何も文句が言えなくなってしまった。



うん、今度君と会う時は、塗りづらいマニキュアを頑張ってみよう。
こんなに小さい爪に付いた色でも、きっと君は気づいてくれるだろうから。















(いとおしい一センチ)